【さい帯血】保管するべき?民間バンクのメリット・デメリットを解説します
- さい帯血は保存するべき?
- どんな場面で使えるの?
- どこに保管すればいいの?
さい帯血は、白血病などの病気の治療に役立つことが知られています。妊娠時に情報を耳にして、保管しようか迷うひとも多いのではないでしょうか?
さい帯血は、赤ちゃんが生まれる際に取れる貴重な幹細胞です。保管することで、将来、病気やケガの治療に役立つ可能性があります。
しかし、さい帯血を保管するには高額な費用がかかることや、保管したところで使えるとは限らないため、慎重な判断が必要です。
本記事では以下の点についてまとめています。
- さい帯血の特徴
- 現在の医療の利用状況
- 公的バンクと民間バンクの違い
- 民間バンクのメリット・デメリット
わたし自身、2019年に我が子のさい帯血を保管した経験があります。
その2年後にさい帯血を利用した脳性麻痺治療の治験に応募しました。
結果は、血液の型が合わず治験への参加は見送られましたが、「今回はだめでも治験の段階が進めば対象になる可能性がある」と言われています。
我が家にとって、さい帯血が将来の希望の光になっていることは間違いありません。
保管のチャンスは出産時の一度だけである貴重なさい帯血。迷っている方はぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
さい帯血とは?さまざまな病気が治る?
まずはさい帯血について、以下の2点を解説します。
- さい帯血(さいたいけつ)とは?
- さい帯血が治療に使える病気
さい帯血(さいたいけつ)とは?
さい帯血とは、へその緒の中に含まれる胎児血のことです。
※さい帯=へその緒。漢字で書くと「臍帯」
さい帯血のなかにある『幹細胞』がさまざまな病気の治療に役立つ可能性を秘めています
幹細胞は、臓器や筋肉、骨、血液の成分、神経などの身体のもととなる細胞のことです。
細胞は、自己複製能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特殊な細胞である。この2つの能力により、発生や組織の再生などを担う細胞であると考えられている。幹細胞には、その由来や能力などから、幾つかの分類がされており、主に胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞などが挙げられる。
出典:藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座より
さい帯血が治療に使える病気
さい帯血には、血液を造る細胞(造血幹細胞)がたくさん入っており、以下の病気の治療に役立っています。
- 白血病
- 先天性免疫不全
- 代謝疾患
血液の病気以外にも、現在治療法のない多数の疾患に、さい帯血の利用が期待されています。
- 脳性まひ
- 自閉症
- 小児難聴
なかでも脳性まひ治療の臨床実験が進んでおり、一定の効果が出ています。
≫臍帯血幹細胞治療 脳性まひ児に一定の効果※九州医事新報社2019年3月20日
本人のさい帯血だけではなく、きょうだいのさい帯血を用いた臨床実験も行われています。
≫臍帯血 きょうだいからも 脳性まひ患者ら、早期実現求め署名活動※東京新聞.com 2019年6月28日
【さい帯血バンク】公的バンクと民間バンクの違い
さい帯血バンクは公的バンクと民間バンクがあります。
- 公的バンク…個人利用不可。出産したひとから無償で提供。移植に利用される。
- 民間バンク…将来に備えるために個人で保管。高額な保管料がかかる。
公的さい帯血バンクとは?
白血病などの治療で移植に用いられる臍帯血を供給する事業者です。
臍帯血の採取、調整、保存を行います。
移植を希望した患者がいる医療機関へ臍帯血を引き渡す業務も行っています。
- 個人で利用することはできない
- 出産した人から無償でさい帯血を提供してもらう
- 保管費用の個人負担はない
- 白血病などの治療のために必要な人に移植される
全国で6カ所の業者が、さい帯血供給事業者として厚生労働大臣の許可を受けています。
民間さい帯血バンクとは?
本人や家族の病気の治療のために、現在はまだ医療技術としては確立されていない再生医療などに将来利用する場合に備えて、委託契約を結び、保管費用を支払うことにより、臍帯血を保存してもらう事業者です。
出典:厚生労働省HPより
- 自分や家族の病気治療のために保管
- 現在、医療技術としては確立していない
- 将来利用する場合の備えとして保管
- 個人で業者と委託契約を結ぶ
- 保管費用は高額
民間さい帯血バンクのメリット
個人で保管する場合は、必然的に民間臍帯血バンクを利用することになります。
メリットは『将来、こども自身や家族の病気の治療に使える可能性がある』点です。
未来への投資といっていいでしょう。
民間のさい帯血バンクのデメリット
現時点でのデメリットを3つ解説します。
- 保険診療で使えない
- 倒産やトラブルになる場合がある
- 使う日はこないかもしれない
保険診療では使えない
現在、保管したさい帯血を用いた治療が臨床研究で行われていますが、一般の保険診療は行われていません。
参考:※厚生労働省HP
倒産やトラブルの可能性がある
民間企業のため、倒産の可能性があります。実際過去に倒産した会社がありました。
しかも、倒産した会社から流出したさい帯血が販売され、国に無届けで違法な再生医療に使用される事案が発生しました。
≫臍帯血事件、販売業者を再逮捕へ 詐欺と横領の疑い※朝日新聞デジタル(2017年9月15日)
≫無届け臍帯血、事件の構図は? ※朝日新聞デジタル(2017年11月3日)
事件後、厚生労働省が調査に乗り出しました。
≫【図解・社会】臍帯血民間バンクの調査結果(2017年9月)※時事ドットコムニュースより
過去には7社ほどあった民間さい帯血バンクですが、現在は2社しかありません。
≫臍帯血バンク4社が廃業 継続は3社、厚労省調査 ※2017年11月6日日本経済新聞
事件をきっかけに、造血幹細胞移植法が改正されました。
≫厚生労働省のHPはこちら
使う日が来るかどうかは分からない
保管費用の詳細は後述しますが、我が家は20年間保存で約30万円強支払いました。※2019年当時の価格です。
高額な出費ですが、何度も述べたとおり使わない(使えない)かもしれません。
過去に、さい帯血に関しての注意喚起が出ていました。
≫さい帯血の私的保存に注意(外部サイト:日本産婦人科医会報_平成14年11月号より)
注意喚起の内容をまとめると
- 白血病で移植が必要な患者は10万人に1人程度
- 万が一必要になっても公的バンクで十分対応可能
- 現在、個人保管しているさい帯血を治療に使うことはほぼ無い
我が家や長女が脳性まひです。将来の可能性に賭けて、次女の出産時に保管することを決めました。
- 今後、長女の脳性まひの治療に使えるかもしれない
- 次女も脳性まひになるかもしれない
脳性まひ治療は、まだ臨床研究の段階です。
白血病などの治療も個人保存のさい帯血は使用されていません。
今だけを考えると、使える可能性は極めて低いです。
それでも保管しなければ臨床研究に参加するチャンスは得られないため、未来への投資と考えています。
現在保管可能な民間さい帯血バンクは2社!
現在、厚生労働省に届け出ている民間さい帯血バンクは2社です。
厚生労働省においては、公衆衛生上の観点及び契約者(依頼者)の保護の観点から、臍帯血プライベートバンクの業務内容等を把握するとともに、契約者(依頼者)本人に対して臍帯血プライベートバンクの業務に関する適正な情報が提供されることを確保するため、臍帯血プライベートバンクに対して、事業の開始、変更及び休廃止の際には、臍帯血プライベートバンクの業務内容等や保管臍帯血の管理体制等について、届出及び報告等を求めることとしました。
出典:厚生労働省HPより
ステムセル研究所
企業情報の詳細はこちら
事業内容は
- ステムセル(造血系幹細胞)の受託管理事業
- ステムセルを利用した新治療方法の研究開発および普及
- 末梢血幹細胞の受託管理事業
さい帯血による脳性まひ治療の研究で高知大学に協力している会社でもあります。
我が家もステムセル研究所に保管中です
ステムセル研究所は、電解水素水整水器を扱っている日本トリム(証券コード6788)の子会社です。
子会社であるステムセル研究所も2020年12月8日付で、東京証券取引所へ新規上場申請を行ったと公表しています。→2021年6月25日、東証マザーズ上場済
2020年3月にコロナの影響で一度上場を取りやめていましたが、また申請したようですね。
民間さい帯血バンクとして20年以上の歴史があり安定した会社です。
株式会社アイル
株式会社アイルのホームページはこちら
アイルは、関東・北日本を中心に140以上の医療施設(病院・健診センター・人間ドック等)を抱えるIMSグループから依頼された臨床検査の共同利用を目的とし、高精度かつ迅速な対応、そして効率性を追求した臨床検査専門の国内有数の施設です。
臨床検査全般にわたる業務のほか、ホルター心電図解析センター、睡眠時無呼吸解析センター、環境衛生事業、など多角的な事業を展開しIMSグループの総合医療の一翼を担うとともに、広く地域社会に貢献しています。
出典:株式会社アイルHPより
さい帯血のみを扱っている訳じゃなくて、臨床検査専門の会社なんだね。
さらに、株式会社アイルはIMSグループに属しているとのこと。
IMSグループは関東を中心に33の病院、16の介護老人保健施設、8のクリニックを擁する日本を代表する医療グループです(さい帯血.comより)
さい帯血の保管費用・保管期間は?
さい帯血の保管期間は半永久的。
保管費用は、10年間で約25万円〜30万円です。
詳しく見ていきましょう。
保管期間は半永久的!
さい帯血は、半永久的に保管可能であると考えられています。
細胞にダメージが少ない手法で凍結した後に、超低温(マイナス190℃)の液体窒素タンクで保管します。この状態で半永久的に保管可能であると考えられています。文献的には液体窒素で23年間保管したさい帯血幹細胞の有効性を示すデータが報告されています。
出典:ステムセル研究所HP
23年間使えることは証明されているようです
10年間の保管料は約25万円〜30万円
10年間保管した場合の2社の保管料を表にしてみました。
ステムセル研究所 | 株式会社アイル | |
初期費用+処置料 | 16万8,000円 | |
さい帯血保管料 | 26万4000円 | |
保管料/年 | 1万500円 | |
さい帯採取量 | 3万3000円 | |
10年プリペイド | 8万4,000円 | |
10年間の合計 | 29万7,000円(税込) | 25万2,000円(税込み) |
※株式会社アイルは10年プリペイド84,000円というプランがあります。
保管する期間によって料金が変わりますし、それぞれの会社でプランの内容が異なります。
もし保管を検討する場合は、2社から資料を請求して保管期間と料金について直接確認しましょう。
【まとめ】さい帯血保管は未来への投資
2022年現在、さい帯血を保管してもすぐに治療に使えるものではありません。
そこを理解した上で保管するかどうか決めましょう。
さい帯血の個人保管は『未来への投資』と考えています
現在、さい帯血を利用してさまざまな臨床研究が行われています。
我が家は、高知大学で行われている脳性まひ治療の臨床研究に応募しました。
→体験談は後日執筆予定
応募の際、ステムセル研究所の担当者が親切丁寧に説明して下さり、親身に協力してくれたのが印象的でした
結局、長女と次女の血液の型が合わず研究の対象外でしたが、将来の希望は捨てていません。
今後、再生医療が発展し、さい帯血を使った治療が普及することを願っています。
コメント